あらすじ
 宮崎駿監督自身が擬人化された豚のキャラクターとして登場し、「天空の城ラピュタ」に登場する飛行機械と、19世紀の空想科学小説に登場する様々な「空とぶ機械達」を紹介していく。ナレーションも監督が自ら担当している。
大空を自由に飛びまわることは人類の大昔からの憧れであり、科学技術が進歩する前は魔法か人の力を頼りにしていた。ところが、科学の発展により様々な機械が発明されると、人々はエンジンや歯車の軽量化とプロペラの増大により何でも飛ばせると信じるようになり、19世紀のヨーロッパの科学小説には沢山の珍妙な飛行機械が登場することとなる。オールをこいで進む飛行船、パラソルを開閉させて進む気球、コウモリや魚の形をした飛行機、空中から電気をとって飛ぶ木造フライングボックス、空中海賊のプロペラ甲鉄艦、都市を自由に飛び交う空中タクシーなどの奇怪な乗物が空を埋め尽くす。
 やがて飛行機械は現実世界でもどんどん進化していき、現在は誰もが空の旅ができるようになった。と同時に、人類の空を飛ぶことへの欲求は満たされてしまったのか?いいえ、今でも、そしてこれからも、人類の大空への憧れは消えないであろう。物語のラスト、パズーに似た少年が紅白のオーニソプター「アルシオーネ」に乗って大空へと飛び立っていく。
解説
 「空想の空とぶ機械達」は、三鷹の森ジブリ美術館の企画展示「天空の城ラピュタと空想科学の機械達展」のために制作された短編アニメーションである。展示場内に設けられたミニシアターにおいて上映された。企画展示の終了とともに本作の上映も打ち切られたため、現在は鑑賞することができない。
 本作には、19世紀の小説やイラストに描かれた飛行機械を宮崎監督が独自にアレンジした様々な乗り物が登場し、見る者を楽しませる。これらの乗り物はハーモニー処理によってセルに描かれた後、3D技術を応用して動かされていて、これにより2Dの質感を保ったままリアルで複雑な動きをつけることができるようになった。このアナログとデジタルが融合した技術は画期的であり、後の「ハウルの動く城」の城の動きや戦争のシーンに活かされた。ちなみに、ハーモニー処理は「天空の城ラピュタ」と同じく高屋法子が担当していて、、本作と「天空の城ラピュタ」に登場する飛行機械は同じような質感やタッチを持っている。
 音楽は「天空の城ラピュタ」で使用された曲を流用しており、さらにラストではパズーに似た少年が登場するなど、企画展示のテーマに沿って「天空の城ラピュタ」を意識させるようになっている。内容も宮崎監督の趣味が色濃く反映されており、「もののけ姫」以降の作品にあった重厚なテーマや複雑なストーリー構造は見られず、「天空の城ラピュタ」以前に回帰したかのような軽快で単純な作品に仕上がっている。
データ
公開期間 2002/10/02−2004/05/09
上映時間 5分59秒17コマ
COPYRIGHT © 2002 二馬力・G
スタッフ
ナレーション 宮崎駿
原作・脚本・監督 宮崎駿
音楽 久石譲
プロデューサー 鈴木敏夫
制作 スタジオジブリ
作画監督 米林宏昌
原画 二木真希子 賀川愛 山田憲一 松瀬勝 山森英司 中村勝利 小野田和由 松尾真理子
田村篤
動画チェック 舘野仁美
動画 手島晶子 中込利恵 鈴木まり子 今野史枝 廣田俊輔 笹木裕美 高橋もよ 近藤梨恵
西河広美 寺田久美子 土岐弥生 椎名律子 西戸スミエ 東誠子 林良恵
動画協力 スタジオたくらんけ
美術監督 武重洋二
背景 長田昌子 平原さやか 吉田昇 男鹿和雄
ハーモニー処理 高屋法子
色彩設計 保田道世
仕上検査 守屋加奈子 山田和子
デジタルペイント 森奈緒美 織田富美子 石井裕章 野村雪絵 大村章博 岡田理恵 斎藤清子
デジタル作画監督 片塰満則
デジタル作画 佐藤美樹 軽部優 山田裕城 泉津井陽一 松村智香 桝内進
映像演出 奥井敦
デジタル撮影 薮田順二 高橋わたる 田村淳
録音演出 林和弘
整音 井上秀司
効果 野口透
録音 東京テレビセンター
音響制作 KiKi
音楽制作 稲城和実
編集 瀬山武司
制作担当 渡辺宏行
制作デスク 神村篤 望月雄一郎
制作進行 清川良介
ポスプロ担当 古城環 津司紀子
現像 IMAGICA
タイミング 平林弘明
フィルム・レコーディング 豊谷慎吾 柴田祐男 本間政弘
カラー・マネジメント・システム 遠藤浩平
GALETTE TM 山井哲也
フロント業務 志村由布子
ラポ・マネジメント 川又武久