ロケ地紹介:出雲編:鉄の歴史村


「もののけ姫」では、日本古来の製鉄法であるタタラ製鉄の様子が丹念に描かれていました。
このページではタタラ製鉄の歴史、技術、文化を展示している雲南市吉田町(旧吉田村)の鉄の歴史村を紹介します。


日本に唯一現存する「高殿」と呼ばれる製鉄施設である菅谷たたらです。
室町時代を舞台にした「もののけ姫」にも高殿が登場しますが、高殿で製鉄が行なわれるようになったのは江戸時代になってからで、施設の大きさもずっと小さなものでした。


高殿の内部です。中央に炉があり、両脇の鞴(ふいご)と送風管によって繋がっています。「もののけ姫」には人間の身長の2倍以上もある巨大な炉が登場しますが、実際の大きさは高さ1メートルにも満たないものでした。
火を扱うため、燃え移らないように天井が高くなっています(写真右)。


炉の内部です。ここに砂鉄と木炭を交互を加え続け、ヒ(けら)という金属塊を生成させます。
炉には鞴から送風管を通して風が送られます。風量が多いと炉内の温度が上がり、少ないと温度が下がるのですが、温度は高すぎても低すぎても失敗するため、鞴踏みは常に慎重に行なわれました。
「もののけ姫」では鞴踏みは女性がやっていましたが、実際には男性がやる作業でした。
炉は1回の操業で壊され、中からヒが取り出されます。


菅谷たたらの横に立っているカツラの木です。
製鉄の神である金屋子神が降臨したと伝えられている木で、神木として崇められてきました。


大銅場です。高殿で出来たヒはここまで運ばれ、水車の力で釣り上げた分銅を落とすことで細かく砕かれます。
砕かれたヒは鋼造り師によって品質鑑定され、鍛冶場へと運ばれていきます。


タタラ場の近くを流れる菅谷川です。鉄分で岩石が赤みを帯びています。


鉄の未来科学館です。菅谷たたらの炉と地下構造を模型で復元し、近代製鉄の構造と歴史を紹介しています。


館内で再現されていた菅谷たたらの地下構造です。「もののけ姫」の作中では描かれていませんが、湿気の浸入と地下への放熱を防止するため、タタラの炉の下には床釣り(とこつり)と呼ばれる複雑な地下構造が築かれていました。
最下部に排水溝があり、その上に荒砂や砂利、さらにその上に粘土が敷き詰められます。上部には中央に本床、左右に小舟と呼ばれる3つの空洞があり、それぞれに詰め込まれた薪を燃焼させることで床釣りの土を乾燥させます。薪は木炭になって本床に詰め込まれ、小舟は保温効果を高めるための空洞となります。上の写真は床釣りが完成した状態の模型で、小舟は空洞になっており、本床には木炭がびっしりと詰まっています。


床釣りの模型の横にはタタラ製鉄で生産されたヒが展示されていました。


鉄の歴史博物館の1号館です。日本の製鉄の歴史や技術、製鉄に携わった人々の道具を紹介しています。


同博物館の2号館です。田部家による鉄山経営と鍛冶集団の様子を紹介しています。


1号館と2号館の間の敷地に、タタラ製鉄で使われた材料が展示されていました。上の写真は砂鉄です。


砂鉄の母岩です。砂鉄は黒雲母花崗岩の中に含まれていますが、砂鉄の含有量は1%以下らしいです。
1回の操業でいかに大量の土砂を削り出す必要があったのかが分かりますね。


炉を築く際に使われた釜土です。砂鉄を含まない真砂利と粘土を混ぜることによって作られます。


タタラ製鉄では重要な役割を担う木炭です。砂鉄と一緒に炉に入れられ、炉内で砂鉄が木炭の隙間を落下する間に還元、浸炭などの化学反応を起こし、鋼や銑に変わります。1回の操業で必要とされる木炭の量は12トンで、森林面積に換算すると1ヘクタール弱くらいです。「もののけ姫」の作中ではタタラ場の近くの森が禿山になるくらい伐採されていましたが、実際のタタラ製鉄はそこまで大規模なものではなく、日本の湿潤な気候と肥沃な土壌により森林の回復力が大きかったこともあり、持続可能な製鉄を営むことが出来ていました。また、「もののけ姫」ではこの木炭を確保するための炭焼きの様子がしっかりと描かれています。

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